ラフマニノフ&クライスラー/グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番/1928年録音

グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op.45

(P)セルゲイ・ラフマニノフ (Vn)フリッツ・クライスラー 1928年9月14日~15日録音

ラフマニノフという人は随分とロマンティックな音楽を書いた人なのですが、ピアニストという立場になると実に端正で直線的な造形で音楽を構成しました。つまりは、彼の書いた音楽から想像するようなロマンティックな味わいとは全く無縁のところで音楽を形づくっているのです。
考えてみればぞれは実に不思議な話なのですが、そうすると彼の作品をロシア的な憂愁で染め上げるように演奏するのは根本的に間違っているのかもしれません。何故ならば、彼が書いた作品は、彼の頭の中では思いの外にザッハリヒカイトに鳴り響いていたかもしれないからです。

そして、ここでも、自由奔放に振る舞うクライスラーに対して、ラフマニノフは音楽のフレームであり続けています。
に言えば、そう言う確固としたフレームがあるからこそ、クライスラーは安心して自由に振る舞うことが出来ているのです。そんなラフマニノフも30年代にはいるとピアニストとしての腕に関しては翳りを見せるなどと言われることが多くなっていくのですが、この20年代の録音であればそんな翳りなどは微塵も存在しません。

ここには、20世紀を代表するもっとも偉大なピアニストの一人であるラフマニノフの芸が刻み込まれています。もちろん20世紀を大ヒョするもっとも偉大なヴァイオリニストの一人であるクライスラーにかんしても、また関しても然りです。