ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
(P)セルゲイ・ラフマニノフ ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1939年12月4日&1940年2月24日録音
改めて聞き直してみて、これはもう大したものだと思わずにはおれません。
おそらく、この時代において、この作品を余裕を持って演奏することができたのはホロヴィッツと作曲家でもあるラフマニノフぐらいだったはずです。
そして、その二人の手にかかるとこの難曲がいとも易しく演奏できてしまうような錯覚に陥りかねないのです。
なぜならば、難しさというのは下手が四苦八苦しているのを見てはじめて分かることだからです。
ホロヴィッツの演奏でこの作品を聞くと、ピアノを使った軽業と言えば言葉は悪いかもしれないのですが、そこには徹底したエンターテイメン性トを感じます。
それに対して、このラフマニノフの演奏ではこの作品が内包している美質が余裕を持って表現されていることに気づかされます。
ラフマニノフの作品と言うのは、それに相応しいテンポで繋がりよく弾ききらないとその美しさが浮かび上がってきません。
下手なピアニストがテンポを落としてじっくりと演奏するとつながりが悪くなって散漫な雰囲気がただよってしまうのです。
ラフマニノフの演奏では、そのあたりのテンポ設定が実に適切で(そのテンポを維持するのが大変なのですが・・・)この作品がもつ雄大なロマン性をしっかりと表現しています。
音質的には苦しい部分はあるのですが、それでも永遠に聞きつがれる価値のある演奏だといえます。