シューベルト(ウィルヘルミ編):アヴェ・マリアD.839
(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ (P)アンドレ・ブノア 1917年11月19日録音
1917年10月27日、ハイフェッツはカーネギー・ホールでアメリカ・デビューを果たします。
その公演は大成功で「16歳の少年ヴァイオリニストの演奏は、栄えある歴史を持つこのホールにおいても、いまだかつて聴くことが出来なかったほどの、おそるべき技術と音楽性の高さをまざまざと見せ付けてくれた」と絶賛されたのでした。
この録音は、そのデビュー公演の大成功を受けてヴィクターが急遽計画したもので、それもまた大成功をおさめて、10代にしてアメリカでの地位を確固たるものとしたのです。ですから、おそらくこれがハイフェッツの初録音で、この日に以下の5曲が録音されています。
- シューベルト(ウィルヘルミ編):アヴェ・マリアD.839
- ドリゴ:エール・デ・バレ第2番 花火のワルツ
- ベートーヴェン:「アテネの廃墟」op.113~回教僧の合唱
- エルガー:気まぐれ女op.17
- ヴィエニャフスキー:スケルツォ・タランテラop.16
1917年の録音ですからいわゆる「アコースティック録音」です。
この「アコースティック録音」というのは大きなラッパのようなものに向かって演奏し、そのラッパが捉えた振動がカッティングマシーンに伝わってディスクに溝を刻むという「原始的」なシステムでした。
この仕掛けでは高域は概ね4KHzくらいまでしか収録できなかったので、複雑な倍音域を持つヴァイオリンのような楽器にとってはその魅力が十分に捉えてもらえない録音方法でした。
しかし、その様な中でもこのヴィクターの録音はかなり優秀です。
特にこの「アヴェ・マリア」はかなり保存状態の良いSP盤があったようで、100年以上も前の録音とは思えない素晴らしさです。