ハイフェッツ/ツィゴイネルワイゼン/バルビローリ指揮 ロンドン交響楽団

サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン Op.20

(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ サー・ジョン・バルビローリ指揮 ロンドン交響楽団 1937年4月9日録音

ハイフェッツという人は年を重ねても「衰え」というものを殆ど感じさせない人でした。
もっとも、そう書いたところで彼の実演は聞いたことなどはないので、あくまでも「録音」を通してのことです。

ベルリンでのハイフェッツ13歳の頃の演奏を聴いたフリッツ・クライスラーが、友人のヴァイオリニストに「私も君もヴァイオリンを叩き割ってしまったほうがよさそうだ」と語ったというのは有名な話です。
そして、「確かに上手いが、あいつは13才の頃からちっとも進歩していない」と貶したヴァイオリニストがいたというのは、そう言うハイフェッツの衰えのなさを裏返しの形で表現したものでした。

ただし、年を重ねると響きは細身になって厳しくなっていったような気がします。
特に、全てのレパートリーを録音しつくして、後は気の合う仲間と室内楽の演奏をメインにし始めた頃からその傾向はより強くなっていったでしょうか。そして、そう言うハイフェッツの音色を聞いて機械的で冷たいという評価も生まれたのかもしれません。

その事を思えば、こういう戦前の録音からは艶やかで、時には妖艶とも言える音色を振りまいていたことがよく分かります。