ショパン:ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3&第13番 変ニ長調作品70-3
(P)マルグリット・ロン 1929年11月2日&14日録音
マルグリット・ロンにとってショパンの音楽というのは彼女の芸の中では本線ではなかったはずです。しかしながら、そんなショパン演奏の中でもっとも聞くものの心を捉えてはなさいのがこのワルツ集でしょう。
ここにはどれほど恣意的と言われようが、「マダム・ロン」にしか表現できない世界があります。
それはもう「マダム・ロン」の溜息のような音楽です。
京極夏彦風に言えば、
「どうせこの世は恨みつらみに妬みに嫉み。
所詮浮き世は夢幻と、見切る浮き世の狂言芝居」
といいところでしょうか。
ならば、しばしの間、私の手を取って踊ってみましょうかという雰囲気です。
この崩れ落ちるような世紀末の雰囲気を表現できるピアニストは今もう一人もいないのです。