マルグリット・ロン/ショパン:舟歌

ショパン:舟歌 嬰ヘ長調作品60

(P)マルグリット・ロン 1933年3月6日録音

これはマルグリット・ロンというピアニストの特徴がよくあらわれた演奏かも知れません。

マルグリット・ロンは「ハイ・フィンガー・テクニック」の信奉者だったそうです。
昨今は至って評判の悪いテクニックらしいのですが、おそらくは「マダム・ロン」が愛した音楽にとってそれはとても有効な演奏法であり、この舟歌でも水面をよぎるような燦めきが聞くものを魅了します。
そして何よりも、彼女が愛したフォーレやラヴェル、ドビュッシー、そして何よりもモーツァルトの音楽にとっては、その「ハイ・フィンガー・テクニック」による「ジュー・ベルレ(真珠をころがすようなタッチ)」こそが相応しかったのです。

ですから、そこにあるのは何処まで行っても「マダム・ロン」という主観を通した上で表現される音楽であって、それをもってあまりにも恣意的な演奏だとか、好き勝手に演奏しすぎているなどと批判しても始まらないのです。

ただし、今時こんな演奏をしていれば、コンクールでは1次審査もパスしないでしょう。
おそらく、そのあたりが、昔の演奏家の偉かったことであり、幸せだったところなのです。