メンゲルベルク/ローエングリン 第1幕への前奏曲/コンセルトヘボウ管弦楽団

ワーグナー:ローエングリン 第1幕への前奏曲

ウィレム・メンゲルベルク 指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団 1927年6月10日録音

同じワーグナーでも、長年の古女房であるコンセルトヘボウと録音するとこんなにも素敵な音楽になるという見本のような演奏です。
それから、一年の違いではあるのですが録音のクオリティにも大きな差があります。

おそらく、こう言うような濃厚な表情付けを行うのは、直線的にスッキリとした造形を実現するよりははるかに難しいのでしょう。
おそらく、直線的に造形していくのはオケのメンバーが優秀でありさえすれば、そう言うメンバーに対して適切に指示を出しさえすれば実現可能です。
しかし、曲がりくねった曲線で音楽を造形しようとすれば、指揮者とオーケストラの間に深い認識の共有が不可欠であり、それは数年のつきあいで生まれるようなものではないのです。

そう考えれば、録音がデジタルとなり、それによってオーケストラのスキルは飛躍的に向上し、その事によって、有名指揮者は世界中を駆けめぐり、数回のリハーサルで十分なクオリティを持った音楽を提供できるようになりました。
しかし、その事は、このメンゲルベルクとコンセルトヘボウのような深いつきあいによって生み出される様な音楽を絶滅させてしまいました。

もしかしたら、心ある指揮者の中はそう言う音楽をやってみたいという思いを持っている人もいるのかも知れません。
しかし、そんな事はもはや物理的に不可能になってしまっているのです。彼らは手際よくリハーサルを行ってコンサートをこなせば、すぐに飛行機に乗って次の演奏会場に向かうのです。

しかし、裏返して考えてみれば、そんなにも「恵まれない環境」のもとでもそれなりのクオリティを実現してしまう「今の音楽家達」の能力というのは大したものだとも言えます。

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