メンゲルベル/マーラー:交響曲第5番よりアダージョット/ コンセルトヘボウ管弦楽団

マーラー:交響曲第5番よりアダージョット

ウィレム・メンゲルベルク 指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団 1927年5月録音

とんでもなく古い録音なのですが、マーラー演奏を語る上では忘れてはいけない録音であることも事実です。
よく知られた話ですが、マーラーは自分の音楽の理解に関しては弟子のワルターよりもメンゲルベルクの方を高く評価していました。ですから、この第5番と第8番の交響曲はメンゲルベルクに献呈されているほどなのです。

メンゲルベルクと言えばポルタメントを多用した強烈な表情付けが持ち味なのですが、そう言う持ち味が見事なまでにはまったのがこのアダージョットでしょう。
マーラーの音楽がなかなか理解されない時代にあっても、この第5番のアダージョットだけはよく知られていたようで、ワルターの指揮による録音も残っています。

そして、マーラー自身がそう言うワルターの演奏よりはメンゲルベルクの演奏の方を高く評価したとのです。それは、こういう爛熟の極み、腐りかけていると言うよりはもう腐ってるんじゃねーの・・・というような音楽こそが彼の意図するものであったことを伺わせます。

そう考えれば、作曲家の意図に忠実にと言うことを金科玉条にしてひたすらそのスコアを精緻に再現していくというのは、根本的なところで間違いを犯しているような気がするのですが、そう言う恐いことは誰も言わないようです。