エーリヒ・クライバー/モーツァルト:交響曲第38番/ウィーン・フィル

モーツァルト:交響曲第38番 k.504 ニ長調 「プラハ」

エーリヒ・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1929年2月日~3日録音

こういう時代の録音を漁る人がどれほどいるのか分かりませんが、それでもこういう録音に行き当たると一人でも多くの人に聞いてもらいたいなと思ってしまいます。
そう思う理由は以下の2点です。

一つめは言うまでもなく、この冒頭部分からも分かるような重々しいまでのテンポと分厚い響きによるモーツァルトを一度は聴いてほしいからです。
ベルリンの歌劇場の所譜に就任して旺盛な活動を展開していたエーリヒにとっては、この時代はおそらくはもっとも幸福な時代だったことでしょう。そして、それにあわせて時代がかった演奏スタイルから少し実エーリヒらしい直線的な造形が姿を見せ始めた次でもありました。

今から見れば何とも言えず時代がかった大仰なスタイルなのですが、それでもその当時にあっては最先端を行く演奏スタイルではなかったかと思われます。
ですから、そう言う演奏における歴史というものを知る上でも一度は聞いてもらいたいと思うのです。

そして、二つめとして、そう言う演奏スタイルを確認するだけでなく、音楽として楽しめるだけの録音のクオリティを持っていると言うことです。
どういう状態でこの音源が保存されていたのかは分かりませんが、1929年の録音としては驚異的な録音クオリティを持っています。それは、この時代のウィーンフィルの美質を十分に堪能できるクオリティを持っています。

ですから、「演奏史」の勉強として「無理をして聞く」というスタイルではなくて、素直に音楽を楽しむというスタンスで聞けるだけのクオリティを持っているのです。
そして、こういう優れものに出会うと、もっと頑張って発掘してこなければという気持ちにもあるのです、