クナッパーツブッシュ/「リエンチ」序曲/ウィーン・フィル

ワーグナー:「リエンチ」序曲

ハンス・クナッパーツブッシュ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1940年録音

クナッパーツブッシュの「リエンチ」序曲と言えば、最晩年の1962年にミュンヘンフィルと録音した演奏を思い出す人が多いでしょう。
あれは驚くほどに遅いテンポで、聞くものを深い場所へと沈潜させていく演奏でした。

演奏時間だけを比較しても音楽の内実には何の関係もない話なのですが、このウィーンフィルとのスタジオ録音と較べてみると2分以上も長いのですから驚いてしまいます。パーセンテージ表示するならば125%の時間をかけて料理しているわけです。
ただし、この両者を聞き比べてみると、音楽の出始めは似たようにも聞こえます。
違いは、ミュンヘンフィルとの演奏ではそのテンポを最後まで維持していることです。それと比べると、ウィーンフィルとの録音では後半部分にはいるといささか走りすぎの感が拭いきれません。

ただし、これがスタジオ録音であったことを考えると、SP盤2枚におさまるように調整したのではないかという疑念も湧いてきます。
何故ならば、最初のテンポ設定を維持していればおそらく2枚にはおさまらなかったはずですから。

そう考えると、彼は必ずしも録音という行為に対して否定的ではなかったのかも知れないという気もしてくるのです。