クナッパーツブッシュ/ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら/ベルリン国立歌劇場管弦楽団

リヒャルト・シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28

ハンス・クナッパーツブッシュ指揮 ベルリン国立歌劇場管弦楽団 1928年9月4日~5日録音

クナッパーツブッシュが本格的にレコーディング活動を始めるのが1928年です。

もちろん、それ以前にも録音は行っているのですがいわゆる大きなラッパに向かって演奏する「アコースティック録音」であり、音質的には非常に貧しいものでした。
それらと比べると、この1928年の録音は既にマイクロフォンを経由した電気録音であり、驚くほどに良好な状態で録音されています。

クナッパーツブッシュと言えば枕詞のように「録音嫌い」と言われるのですが、調べてみればこういう録音活動の黎明期からかなり熱心にスタジオ録音を行っているのです。
おそらく、そのきっかけとなったのはこの電気録音の音質だったのではないかと推測されます。

この年の2月にはウィンナーワルツを5曲(「加速度」「ドナウの精」「人生の歓び」「ウィーンの森の物語」「こうもり」序曲 )、8月にはハイドンのシンフォニー1曲(94番「驚愕」)とリヒャルト・シュトラウスの作品を3曲(「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「七つのヴェールの踊り」 「インテルメッツォよりワルツ」)、さらに12月には手兵のバイエルン州立歌劇場管弦楽団を使って2曲(「ウィリアム・テル」序曲「魔弾の射手」序曲)を録音しています。
これは驚くほどの熱心さであると同時に、それだけの商品価値が若きクナッパーツブッシュにあったと言うことです。

そして、年を経るにつれて「改変」かと思うほどに恣意的な音楽作りを厭わなかったクナッパーツブッシュなのですが、若い頃は随分と直線的な造形だったことも興味深く思えます。