アドルフ・ブッシュ/ブランデンブルク協奏曲第2番/ブッシュ・チェンバー・プレイヤーズ

J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第2番 ヘ長調 BWV1047

アドルフ・ブッシュ指揮 (Oboe)Evelyn Rothwel (Trumpet)George Eskdale ブッシュ・チェンバー・プレイヤーズ 1935年9月9日~17日録音

アドルフ・ブッシュを中心としたこのブランデンブルグ協奏曲は、当時のヨーロッパを代表する錚々たるソリストを糾合した録音となっているのですが、この第2番はその中ではもっとも知名度が低い顔ぶれかも知れません。

トランペットの「George Eskdale(ジョージ・エスクデイルと読むのでしょうか)」は1932年から1957年までロンドン交響楽団のトランペット首席奏者を務めた人物です。戦前は「Columbia」で、戦後になってからは「Vanguard」でハイドンのトランペット協奏曲なんかの録音も残しています。
オーボエの「Evelyn Rothwel」は既にふれたように、男社会だったオーケストラへと切り込んでいった最初の女性奏者であり、後にバルビローリ夫人となる人物です。

今となっては記憶の彼方に消えようとしている偉大な音楽家の姿を、アドルフ・ブッシュという偉大な「碇」のおかげで現在につなぎ止められているのは有り難い話です。
そして、そう言うことが可能なのは、80年以上も前のこの録音がバッハに忠実であるがゆえに音楽的な意味を失っていないからです。

例えばポルタメント多用の古色蒼然たる演奏は、それはそれなりに懐古的な興味をひくのですが、そう言う音楽とは明らかに一線を画しています。バッハと言えばゆったりとロマンティックに演奏するものとされていた時代に、これほど鋭角的に、そしてエッジを立てるように造形していたことには驚かされます。こういう「前史」があったからこそ戦後のリヒターのようなバッハ演奏が現れたのかも知れません。

これはリスニングルームの方でも紹介する価値はあるかも知れませんね。