ヨハン・シュトラウス2世:歌劇「ジプシー男爵」序曲
エーリヒ・クライバー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1933年録音
エーリヒは1931年から33年にかけてテレフンケンでウィンナー・ワルツをまとめて録音しています。
既に、このコーナーでも「美しく青きドナウ」や「こうもり序曲」を紹介しているのですが、それ以外にシュトラウス2世の作品では「ジプシー男爵序曲」「皇帝円舞曲」ワルツ「酒、女、歌」「千夜一夜物語」等を録音しています。
さらに、弟のヨーゼフのものとしては「オーストリアの村つばめ」 、ヨーゼフ・ランナーの「シェーンブルンの人々」等も録音しています。
戦前のこの時期にあって、これほどまとまった録音を残すというのは、エーリヒ自身がそれらの作品に深い愛着があったと言うことであり、さらにはそれだけの数の録音が商業ベースに乗って受け容れられる素地があったと言うことでもあります。つまりは、当時に人にとってウィンナー・ワルツとはこのように演奏されるべきものとして捉えられていたのです。
面白いのは、後になればなるほど作品の造形が直線的になると言うことです。
それは、この「ジプシー男爵」においても同様で、そこには「ウィーン風」と言われる戦後のスタイルとは明らかに異なった作品の造形があります。
言葉をかえれば、いわゆる「ウィーン風」の本家本元たるウィンナー・ワルツが全然のドイツ・オーストリア圏ではどのように演奏されていたのかの絶好の用例がここにあると言うことです。