サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33
(Cello)ピエール・フルニエ:ワルター・ジュスキント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1947年9月29日~30日録音
チェリストがヴァイオリニストと較べて辛いのは作品の数が少ないことです。ですから、チェリストの表看板とも言うべきドヴォルザークのコンチェルトなどになると、繰り返し録音させられる羽目になります。
実際、フルニエの録音歴をざっと眺めてみると、戦後になってからでもチェリヴィダッケ、クーベリック(確か2回)、セルなどと録音しています。
そう言えば、シュタルケルもまたレーベルを移るたびにバッハの無伴奏を録音していました。その理由を聞かれたシュタルケルは冗談半分に「頼まれるから仕方がない」と答えていました。
ですから、こういうサン=サーンスのコンチェルトというのは実に有り難い作品なんだろうと思います。
彼は2曲のチェロ協奏曲を残しているのですが、この1番の方は数多くの作品を生み出した壮年期の作品なので、老境に入ってから書かれた2番よりは人気が高いようです。
確かにチェロの特性を生かした伸びやかで美しい旋律に溢れたこの作品は聞くものの心をとらえて放さない魅力に溢れています。
そして、そう言う音楽をフルニエの美しい響きで聞かせてもらうと、時代遅れの愚にもつかない作品ばかり書いたという評価はあまりにも一方的すぎると思わざるを得ません。
それともう一つ、フルニエが40年代にHMVに残した録音はどれもこれも音がいいと言うことです。
録音年代を見る限りは未だ磁気テープによる録音が導入される前ですから、このクオリティには驚かされます。