アンセルメ/ラヴェル:歌曲「シェエラザード」/(S)シュザンヌ・ダンコ

ラヴェル:歌曲「シェエラザード」(PCO 1948)

エルネスト・アンセルメ指揮 (S)シュザンヌ・ダンコ パリ音楽院管弦楽団 1948年録音

先にもふれたように、これもまた1948年のパリ音楽院管弦楽団との録音なので、その時代が信じられないほどの音質です。
そして、そのクオリティの高さがシュザンヌ・ダンコの知的で少しクールビューティーな歌声を見事にすくい上げてくれています。

Suzanne Danco

シュザンヌ・ダンコと言えば、真っ先に思い浮かぶのはエーリッヒ・クライバーによる「フィガロの結婚(55年録音)」でのケルビーノ役です。それとは雰囲気が随分異なるのですが、ラヴェルがカタいたす場らしいオーケストラ伴奏にのって妖しげな魅力をふりまいてくれています。

なお、この歌曲「シェエラザード」は、リムスキー=コルサコフの有名な交響組曲「シェエラザード」とは全く関係がありません。
ラヴェルは若い頃に「千一夜物語」から抜き出した題材でメルヘン・オペラを作曲しようとしたのですが、そこにオリエンタリズムの趣向を盛り込もうとするとどうしてもリムスキー=コルサコフの影響を受けてしまうので、結局は作曲を断念したことがあります。ですから、この歌曲集は「千一夜物語」ではなくて、それとは全く関係のないトリスタン・クリングゾールという詩人の死に曲をつけたものです。