クーベリック/モーツァルト:「偽の女庭師」K.196 序曲/フィルハーモニア管弦楽団

モーツァルト:「偽の女庭師」K.196 序曲

ラファエル・クーベリック指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音

3幕からなるオペラ・ブッファで、1774年9月頃ミュンヘンの選帝侯マクシミリアン3世から謝肉祭用のオペラとしを依頼されたものと考えられています。

ですからオペラの公演はミュンヘンで行われたので、モーツァルトは一家を挙げてミュンヘンに向かうことになります。ただし、そのための宿探しには随分と苦労したようです。

アインシュタインはこのオペラに関しては「人物の内的な悲劇性または喜劇性によってなされたのではなく、因習によって、俳優のカテゴリーによってなされているのである。 そしてモーツァルトがこのカテゴリーを文句なしに尊重したことは、悲しむべきことながら事実である。 彼は眼前に俳優や因習を見て、人物の心中をみていない。」として、その未熟さを指摘しています。
とはいえ、この時モーツァルトは未だ18歳なのですから、そう言う「お約束」に従ってオペラがかけると言うことも示す必要もあったのではないかとは思います。

ただし、ミュンヘンでの公演は大成功をおさめ、観客席にいたモーツァルトは、拍手喝采を浴びることになります。
そして、その大成功を聞きつけて、ザルツブルクから多くの人がミュンヘンを訪れるのですが、残念なことに歌手の病気などによってモーツァルトの「評判のオペラ」をみることは出来ませんでした。
そして、その駆けつけた人々の中にモーツァルトの雇い主であるコロレド大司教もいたのですが、彼は自らの使用人であるモーツァルトの成功を祝う言葉だけを浴びて戸惑ったようだと、モーツァルトは嬉しそうに手紙の中に書き残しています。

選帝侯のご一族の方がたや貴族の方がたすべてが大司教猊下になさったこのオペラについての賞賛のお言葉や晴れがましい祝詞をお聞きになって、猊下がどんなに狼狽されておられたかを想像してごらん。 あのお方はまったく困惑のあまり、ただ頭でうなずかれ、肩をすくめられるだけで、なにもお答えになることがおできにならなかったのだ。

モーツァルトと大司教も最初から険悪な関係ではなかったということです。