モーツァルト:「劇場支配人」K.486 序曲
ラファエル・クーベリック指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音
「劇場支配人」はお芝居に音楽がつくという「ジングシュピール」と呼ばれる形式の音楽です。
ですから、正式には「序曲、2曲のアリア、1曲の三重唱およびヴォードヴィルからなる音楽つきコメディー」とタイトルがついています。
皇帝ヨーゼフ2世が饗宴の余興としてサリエリとモーツァルトに同時に作曲をさせて競わせるという「思いつき」によって作曲されました。
当時、モーツァルトは「フィガロの結婚」の作曲で忙しかったので断りたかったようなのですが、さすがに皇帝からの依頼は断ることはできませんでした。
また、このサリエリとの競争は最初からきわめて不公平なものだったようです。
サリエリの「初めに音楽、次に台詞」の台本は真っ当なオペラの台本(アインシュタインによれば傑作とも言えるほどの優れた台本)に基づくものであったのに対して、モーツァルトの「劇場支配人」は田舎芝居とも言うべき酷い内容だったからです。
さらに言えば、全10場からなるこの田舎芝居では最初の6場までは芝居のみで、音楽が登場するのは第7場からなのです。これでは、モーツァルトといえども腕のふるいようがなかったのです。
そう言う意味で言えば、これほどまでにモーツァルトの音楽的才能を無駄遣いした台本は「贅沢の極み」だったのかも知れません。
なお、この作曲の報酬としてサリエリには100ドゥカーテン、モーツァルトにはその半分の50ドゥカーテンが支払われています。