クーベリック/モーツァルト:「ドン・ジョバンニ」K.527 序曲/フィルハーモニア管弦楽団

モーツァルト:「ドン・ジョバンニ」K.527 序曲

ラファエル・クーベリック指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音

クーベリックという人は力ずくでオケに言うことを聞かせるタイプの指揮者ではなかったようです。
1948年に彼は亡命をするのですが、その後、録音活動の拠点となったのがフィルハーモニア管です。

フィルハーモニア管というのは言うまでもなくEMIのレッグが録音用のオケとして創設したもので、まさに出来たてほやほやでした。イギリス中から腕利きのメンバーを集めたので、クオリティ的には何の問題もないオケだったのですが、そこには「伝統」というものが全くなかったのです。
イギリスのオケというのは大陸の方のオケと較べればニュートラルな性格を持っていると言われるのですが、この時のフィルハーモニ管のニュートラルな性格は際だっていました。

それは、54年に録音されたフルトヴェングラーのトリスタンあたりを聞けばよく分かります。
このオケは、それと同じ時期にカラヤンとの間で颯爽としたベートーベンの交響曲全集を録音していたのです。

聞き比べてみれば、到底同じオケが演奏しているとはにわかに信じがたいほどです。

ですから、この折り目の正しいモーツァルト演奏こそが、クーベリックという指揮者のあるがままの姿だったわけです。
そう思えば、コンセツトヘボウを相手に、どのような思いであのポルタメントを多用したマーラーを演奏していたのでしょうか。

個人的には、随分と面白く聞けたのですが、クーベリックにしてみれば我慢のならない音楽のスタイルだったのかも知れません。
ただし、そうであっても、それがオケの伝統であれば無理はしないというのがクーベリックという指揮者のポリシーだったのです。

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