クーセヴィツキー/モーツァルト:交響曲第26番/ボストン交響楽団

モーツァルト:交響曲第26番 変ホ長調 K. 184 (161a)

セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団 1946年録音

セルゲイ・クーセヴィツキーと言う名前も今では「一つの歴史」というレベルの「古さ」におおわれてしまっています。
確かにその経歴を見れば、もとはコントラバスのヴィルトゥオーゾとして活躍していましたものを、ニキシュの助言を得て指揮者に転身したというのですから、それはもう東京で雪の降るのを見て「2.26事件の時もこんな雪だったわ」と呟くのと同じくらいの「古さ」なのです。

クーセヴィツキーの出自を辿ればロシア生まれのユダヤ人なのですが、ロシア革命の後もしばらくはロシアに残っていたようなのですが、1920年にはフランスに亡命し、その後はアメリカに渡ってボストン交響楽団の指揮者を務めます。

そんなクーセヴィツキーの音楽はコントラバス奏者だった事もあってか、低声部のしなやかでエッジの効いた低声部を大切にし、それを土台として楽器の響きを積み重ねていくものだったようです。
ですから、彼が活躍した時代のSP盤のクオリティではその真価は伝わりにくかったようで、実演を聞いたことのない日本国内では「素っ気なくて冷たい音楽」というのが定評だったようです。

このモーツァルトも、驚くほどごっつくてゴリゴリした第1楽章の響きには驚かされます。
しかし、それとの対比になるおかげで第2楽章の「Andante」が実にやさしく響いて実に魅力的です。

もしも、この対比を狙って第1楽章を意図的にゴツゴツと表現したのだとすれば、それはかなりの「芸人」です。
そういえば、嘘か本当かは分かりませんが「クーセヴィツキーの練習は、先ず鏡に向かって指揮のポーズをチェックすることから始まった」というエピソードが伝えられています。

おそらくは、こういう「聞かせ上手」こそが彼の一番の「芸」だったのかもしれません。

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