クリュイタンス/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/パリ音楽院管弦楽団

アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団 1949年10月17日録音

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団によるラヴェル作品の録音と言えば、今も揺るぎないスタンダードとしての地位を保っています。
もちろん、それは60年代のステレオ録音なのですが、クリュイタンスはミンシュにかわってパリ音楽院のオケを引き継いだときにもまとまったラヴェル録音を行っています。

その中でも、前回紹介した「マ・メール・ロワ」とこの「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、まさにクリュイタンスがミンシュからこのオケを引き継いだばかりの頃の録音ですから、まさにこのコンビのスタートラインを記した貴重な記録と言えます。

今さら言うまでもないことですが、クリュイタンスという人は縦のラインをきちんと揃えて形を整えるようなタイプの指揮者ではありません。
もう少し正確に言えば、相手が要求すれば縦のランが揃うベルリンフィルのようなオケだと然るべき要求を出すのですが、そう言うことをいくら要求しても成果が出そうにもない相手の時には無理はしないのです。
そのあたりは、どんな相手に対しても容赦なく鞭をふるうマルケヴィッチなどとは対極に位置する指揮者だと言えます。

そして、そう言う人だったからこそ、この「すれっからし」のパリのオケと四半世紀にもわたって良好な関係が築けたわけであって、さらに言えば、そんな関係が四半世紀も続いたがゆえに、クリュイタンスの死と同時にこのオケは解体される憂き目にあったとも言えるのです。
とは言え、冒頭の弦楽器のピカートに乗ってホルンが歌い出す部分を聞いただけで「いい味出してるなぁ」と思わせるものがありますから、音楽とは難しいものです。