シューリヒト/ブルックナー:交響曲第7番/ベルリン・フィル 1938年録音

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調

カール・シューリヒト指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1938年録音

私が知る限りでは、これがシューリヒトが指揮したブルックナー演奏としては最も古い記録ではないかと思われます。
自費でベルリンフィルを借り上げて演奏会を行って自らの能力を示さなければいけなかった1920年代と較べれば、この両者の結びつきは30年代の後半に入って確固たるものへと変わっていったようです。

おそらく、その背景には、ベルリンフィルの絶対的支配者であったフルトヴェングラーとの関係がきわめて良好だった事があげられるでしょう。
フルトヴェングラーというのは疑いもなく偉大な指揮者ではあったのですが、人間的には随分と狷介なところも多かったようです。

フルトヴェングラーとカラヤンの不仲はここで取り上げるまでもなく周知の事実ですが、戦後になってカラヤンへの評価がどれほ上がっても、フルトヴェングラーはカラヤンをベルリンフィルの指揮台に招くことはありませんでした。
そして、カラヤンのことが話題に上がると途端に機嫌が悪くなり、カラヤンのことをフルネームで呼ぶことはなく、常に「あの『K』が」だったそうです。
大人げないと言えば大人げない話なのですが、天才というのはそう言う歪さが常につきまとうのでしょう。

それと比べれば、シューリヒトは常に高潔であり、紳士でした。
それ故に、そう言うフルトヴェングラーともよき友人として活動を続けることが出来たのでしょう。

しかし、この良好とは言えない録音でブルックナーを聞いてて気付いたのは、その音楽の方向性がフルトヴェングラーとは全く違うと言うことです。
シューリヒトのブルックナーの中にドラマティックな起伏を持ち込むのではなく、どちらかと言えばスムーズに音を繋いで造形していくことに意を尽くしているように聞こえるのです。
そして、その方向性は最晩年まで大きく変わることはなかったようなのです。

そう言う意味では、カラヤンはフルトヴェングラーよりはシューリヒトの方にこそ学ぶモノが多かったのかも知れません。