シューリヒト/運命/パリ音楽院管弦楽団 1946年録音

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67

カール・シューリヒト指揮 パリ音楽院管弦楽団 1946年録音

戦争が終わって活動を再開したものの、それでもシューリヒトの指揮活動の大半はスイス・ロマンド管弦楽団を中心としたものでした。
1946年のザルツブルク音楽祭でウィーンフィルを指揮したりもしているのですが、彼がドイツに帰国するのは1950年代になってからでした。

なお、調べてみると、シューリヒトもナチス政権下で指揮活動を行っていたので、一応は非ナチ化の裁判にかけられているようです。
もちろん、彼の経歴を振り返ってみれば罪に問われるようなことはあるはずもなく、それは形式的なものだったようです。

その様な中で、少しずつ結びつきを強めていったのがフランスのオケでした。
とりわけ、このパリ音楽院とのオケとは、後年ベートーベンの交響曲全集を録音するようになります。

この1946年の運命は全集盤のステンドグラスのような軽さよりも、健康的な明るさが前面に出た演奏になっています。
リズムもよく弾みますし、ラストに向けた盛り上がりも申し分なく、鬱屈した時代を突き抜けた喜びが如実に表れています。

また、1950年代に入って70歳を超えるとリュウマチが次第に悪化しはじめるのですが、この時代はその様な健康の衰えもなく、意気軒昂たる覇気に満ちた音楽を聞かせてくれています。