シューリヒト/ベートーベン:交響曲第7番/ベルリン・フィル 1937年録音

ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92

カール・シューリヒト指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1937年録音

シューリヒトの生涯を概観してみると、概ね3つの時期に分かれるように見えます。
第1の時期はヴィースバーデンという田舎町の音楽監督を務めていた時期です。

彼はこの町と1912年から関係を結ぶのですが、音楽総監督の地位を得るのは1923年でした。そして、この関係は彼がスイスに亡命する1944年まで続きます。
1923年と言えば、シューリヒトは既に43歳ですから、30代半ばでベルリンフィルの音楽監督を手中にしたフルトヴェングラーと較べれば、その歩みの遅さは際だっています。

そんなシューリヒトがはじめてベルリンフィルを指揮したのは、自費でベルリンフィルを雇って演奏会を行った1926年でした。
おそらくは、ヴィースバーデンの音楽総監督の地位を漸く手に入れて、さらにそこからのステップアップを目指しての大勝負だったのでしょう。
実際、そのコンサートはフルトヴェングラーの注意を引き、その口添えでゲヴァントハウス管弦楽団の客演指揮に招かれる事になります。

そして、1933年にベルリンフィル、34年にウィーンフィルから正式に招聘されて指揮台に立ちます。
おそらく、ここからシューリヒトの第2の時期が始まると考えていいでしょう。

その意味では、この37年に録音されたベートーベンの7番は、そう言う新しいステップに踏み出したシューリヒトの姿が刻み込まれています。
そして、彼の音楽の基本が、当時勃興しつつあった「ノイエ・ザッハリヒキト(新即物主義)」にあったことが伺えます。

ちなみに、第3の時期は1956年のウィーンフィルのアメリカ公演以降です。これについては後で詳しくふれたいと思います。(続く)