モントゥー/幻想交響/パリ交響楽団 1930年1月録音

ピエール・モントゥー指揮 パリ交響楽団 1930年1月録音

ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

モントゥーにとってベルリオーズの幻想交響曲は「名刺がわり」のようなものです。事あるごとにコンサートで取り上げ録音も行っていますから、ハテサテ何種類の録音が残っているのかは定かではありません。
ある人は5種類と言い、別の人は6種類残っていると言います。

私が確認した限りでは、このパリ交響楽団と1枚、手兵だったサンフランシスコ響と2枚、ウィーンフィルと1枚、そして、北ドイツ放送交響楽団と1枚の5種類です。
6種類を主張する人はどこかでレアなライブ録音を探し出したのかも知れません。

とは言え、この1930年に録音されたパリ交響楽団との一枚が、モントゥー最初の「幻想交響曲」であったことは間違いないでしょう。

考えてみれば、モントゥーという人は、その実力のわりにはキャリアには恵まれない人でした。
一般的には「春の祭典」の初演指揮者として有名ですから、それなりのポジションにあったのかと誤解されそうなのですが、あれはバレエ一座の座付き指揮者として指揮しただけの話でした。いわゆる、フランスの老舗のオケからは声はかからず、仕方なくアメリカに渡るのですがそれも期待した結果は得られず、再びフランスでパートナーを組んだのがこのパリ交響楽団でした。

そして、そう言う節目の時に気合いを入れて取り上げるのが「幻想交響曲」だったのです。
驚くのは、1930年という録音年代が信じがたいほどに音質が良好なことです。それはもう、年代を考えれば「奇蹟」と言っていいレベルです。

ただし、そうやって気合いを入れたパリ交響楽団だったのですが、わずか1年でスポンサーが倒産してしまいます。
モントゥー50代の、思うに任せぬ時代の、それでも何とか道を切り開こうともがいていた時代の演奏と録音です。