モントゥー/ドビュッシー:海 コンセルトヘボウ管弦楽団 1939年録音

ドビュッシー:海 – 管弦楽のための3つの交響的素描

ピエール・モントゥー指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1939年10月12日録音

メンゲルベルクによる歴史的に有名な「マタイ受難曲」の演奏会は1939年4月2日でした。
このモントゥーによる録音はそれからさらに半年後の10月12日の演奏会と言うことになります。

当時のオランダの立場は微妙なものでした。
侵略の意図を隠そうともしないナチスドイツの振る舞いを前にして、自らの悲劇的な行き末に大きな不安を感じつつも、日々の生活では中立的な立場ゆえに戦争とは無縁だという幻想にしがみついて暮らしていたのです。
しかし、その様な幻想は1939年9月1日、ドイツがポーランドに侵攻することで、ますます危ういものとなっていきます。

ですから、この10月の演奏会はマタイ受難曲の演奏会が行われたときよりははるかに厳しくなっていたのです。
ところが、この演奏からはその様な緊迫した状況を窺うことは出来ません。

モントゥーの棒は冷静で、かつ明晰であり、コンセルトヘボウもそれに応えて精緻な「海」を描き出しています。
そして、この演奏を聞いててふと頭に浮かんだのがマルチン・ルターの言葉でした。

たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私はリンゴの木を植える。

メンゲルベルクのマタイは、悩み苦しむ人により添ったデモーニッシュな演奏だとすれば、モントゥーの演奏はその様な苦しみを乗り越えていこうとするアポロン的な演奏だといえるのかもしれません。
そして、それもまた偉大なる芸人としての魂のあり方だったのです。

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