モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
(P)アルトゥル・シュナーベル マルコム・サージェント指揮 ロンドン交響楽団 1937年1月9日,12日録音
シュナーベルと言えばベートーベンのピアノソナタの全曲録音という偉業をはじめて成し遂げた人であり、それ故に、そう言う「すぐれた音楽」をロマン主義的歪曲から救い出した人という「評価」が定着しています。
しかし、今時の耳からすれば、このシュナーベルのピアノを「即物主義」的なスタイルだと思う人はまずいないはずです。
テンポは結構揺らぎますし、緩徐楽章になるとぐっと腰を下ろして楽しげに歌います。それは、まさに「幸福なモーツァルト」そのものです。そして、当時の人がこのような演奏を聞いて「ロマン主義的歪曲」から救い出したと感じたと言うことは、聞く耳がなかったのではなく、その「ロマン主義的歪曲」というものがいかに酷かったかの証左だと言うべきでしょう。
ただ、一つ疑問が残るのは20番も含めて録音が良すぎることです。あまりにも良すぎます。
最近も少し話題になったのですが、かつてステファンスカの録音がリパッティの録音として出回ったことがありました。その後、本物のリパッティの録音がリリースされたのですが録音のクオリティはかなり落ちてしまいました。
シュナーベルにしては粒立ちもよく、指もよくまわっているような気がしなくもないのですが、まあ、発売元を信じましょう。