シュナーベル/モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K. 467

(P)アルトゥル・シュナーベル マルコム・サージェント指揮 ロンドン交響楽団 1937年1月12日録音

このサージェントの指揮を「だれた演奏で聞いていられない」という人もいるようなのですが、そこまで己の好みを狭めなくてもいいのにと思ってしまいます。私などは細めでエッジを立てるような響きで演奏される方がよほどお気に召さないのですが、それをキビキビしていると感じる人もいるようです。
ただし、そんな事を書くと、お前はいつもセルとクリーブランド管を持ち上げているではないかと言われそうです。しかし、私が大好きなセルは引き締まってはいますが、そんな細めの響きでキコキコと造形するような真似はしていません。

こういうシュナーベルとサージェントの演奏を聴くと、そこには明らかに古き良きヨーロッパの残光が照り映えています。
しかし、振り返ってみれば、こういうシュナーベルのピアノをすでに30年代のアメリカはお気に召さなかったわけです。
それはもう、どちらがいいとか言うレベルの話ではなくて、この当時のアメリカを席巻していたトスカニーニとNBC響との録音などを聞くと、それはもう住む星が違うと言うしかないレベルの話だったようです。

シュナーベルという人はロマン主義的歪曲から音楽を救いだしたと言われるのですが、今の耳からすれば微妙にテンポを動かしたりしてかなり濃厚に歌い上げています。
そして、サージェントの指揮もそう言うピアノの響きに添うような暖かみに満ちた響きでシュナーベルための舞台を設えています。
こういう演奏だと、やはり第2楽章が出色ですね。