リパッティ/エネスコ:ピアノ・ソナタ第3番

エネスコ:ピアノ・ソナタ第3番ニ長調 Op.25

(P)ディヌ・リパッティ 1943年10月18日録音

エネスコというのは調べれば調べるほどに凄い音楽家だったようです。
バッハの全作品を完全に暗譜していたとか、「春の祭典」の初演をきいてかえってきたその日にほぼ完璧にピアノで再現してみせたとか、その手の伝説のは事欠かない人でした。

そして、そう言う「凄い」音楽家というのは偏屈な人が多くて、弟子を育てるなどと言うことには全く興味を示さないことが多いですし、また弟子をとったとしても逆にその才能を潰してしまうことの方が多かったりします。

しかし、エネスコは偉大なヴァイオリニストでありながらも教育活動にも熱心で、さらに教育者としても極めて優秀だったようで、その弟子の中にはメニューイン、グリュミオー、フェラス、ギトリス等という蒼々たる顔ぶれが揃っています。
さらに驚くのは、活動は殆ど自作に限られてはいたのですが、ピアニストとしても稀に見るほどの才能を持っていて、病弱のリパッティの父親がわりとも言うべき形で彼を弟子にもしていました。

そう言う縁もあってか、リパッティはこのエネスコのソナタを翌演奏会で取り上げていました。
エネスコという人はバッハを深く敬愛していたことからも分かるように、彼が愛した音楽の形はポリフォニックなものでした。そして、そう言うポリフォニックなものに対する愛は当然の事ながら自作の中にあふれています。
このソナタは1930年代に書かれたものなのですが、複数の声部が複雑に絡み合っている音楽になっています。
リパッティの指はその複雑に絡み合った声部を見事に浮き彫りにしています。

冒頭部分にはいささかノイズが混ざっているのですが、いくつものラインを見事に描き分けていくリパッティの凄さは十分にとらえています。

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