J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 1944年6月24日録音
この録音はドイツが戦時中に開発した「マグネトフォン・レコーディング」というテープ録音で収録されているので驚くほど音がいいです。そして、その音の良さのおかげでクナッパーツブッシュの演奏の形が細部までよく分かります。
まず、驚くのは出だしからの異常なまでの引きずるような遅いテンポです。それはもう「冗談」かと思うほどの遅さと重さです。
その遅さの最たる要因は重くて引きずるようなバスパートなのですが、そのバスパートを土台として一つずつの旋律に入念な表情が与えられているので聴感的にはさらに遅く感じてしまいます。
ただし、それはクナッパーツブッシュ得意のデフォルメの成果と言うよりは、バッハとはこのような形で演奏されるものだという時代の「約束事」のほうが大きかったのでしょう。
ただし、その時代の制約をクナッパーツブッシュはさらに濃厚に「盛っている」ので、まあ、大変なことになっています。
なお、第2楽章がたったの和音二つで終わっているのはが、それはバッハの楽譜にそう書かれているからです。
ただし、この部分はチェンバロか第1ヴァイオリンの奏者が自由にカデンツァを演奏しなさい言うことなのですが、そう言うことが一般的に知られるようになるのは第2次大戦後のことなので、例えばフルトヴェングラーなんかも同じように処理しています。
その時には「第2楽章がおかしな事になっています」というメールを何通かいただいた記憶があるのですが、決して間違っているわけではありません。