ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53 B.108
(Vn)イェフディ・メニューヒン:ジョルジュ・エネスコ指揮 パリ音楽院管弦楽団 1936年2月26日&28日録音
ドヴォルザークにヴァイオリン協奏曲なんてあったかしら、それってチェロ協奏曲の間違いじゃないの、なんて言われそうなほどにマイナーな作品です。ちなみに、ドヴォルザークはピアノ協奏曲も書いているのですが、そちらはヴァイオリンよりももっとマイナーかもしれません。
有名な曲は「通俗名曲」などと言うありがたくない認定を受けるほどに有名なのに、それ以外の作品になるとほとんど名前も挙がってこないという人がいるのですが、そう言う作曲家の典型の一人がこのドヴォルザークでしょう。
ちなみに、このヴァイオリンのための協奏曲はあのヨアヒムの勧めによって生まれることになりました。
ヨアヒムはドヴォルザークの室内楽作品を高く評価していたようで、その才能を発揮すれば素晴らしいヴァイオリン協奏曲が書けると思ったのでしょう。
そして、ドヴォルザークも偉大なヨアヒムからの勧めと言うこともあって喜んで作曲に取りかかります。
筆は随分と進んだようで、僅か2ヶ月あまりで書き上がった作品はヨアヒムの助言も得て恙なく完成し、その作品はヨアヒムに献呈されます。
ここまでは実に麗しい話です。
ところが、肝心のヨアヒムは作品を献呈されながら演奏しようとはせず、仕方なくドヴォルザークは別のヴァイオリニストにお願いして初演を行うことになります。
そして、驚くのは、このヨアヒムさん、この協奏曲を結局は公のコンサートでは一度も演奏することはなかったようです。
実際聞いてみれば、そしてエネスコの指揮がいささか物足りないことを割り引いても、こういう若きメニューヒンのようなヴァイオリンで聞かされればそれほどつまらない作品だとは思えません。
ただし、残念柄ドヴォルザークの作品の中ではマイナーな部類に数えられる作品に甘んじていますから、ヨアヒムもどこかで物足りなさを感じていたのかもしれません。
しかし、最近になって再評価の動きも出てきたようで、録音する人も増えてきているようです。