マーラー 交響曲第5番より「アダージェット」
ブルーノ・ワルター指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1938年1月15日録音
粋な音楽形式が支配している
「マーラーの最初の4つの交響曲には、意想、想像、感情が浸透しているが、第5から第7までの交響曲には純粋な音楽形式支配している」
これはマーラーの使徒の筆頭格であるワルターの言葉です。
確かに、外見的にも声楽が排除されていますし、楽曲の構造でも伝統的な4楽章形式に回帰しています。
この第5番も5楽章にはなっていますが、よく言われるように第1楽章は序章的な扱いであり、第2楽章から第5楽章までが割合にきちんとした伝統的な構造を持っています。
- 第2楽章:ソナタ形式 嬰ハ短調
- 第3楽章:スケルツォ イ短調
- 第4楽章:アダージェット ヘ長調
- 第5楽章:ロンド・フィナーレ(ロンド形式のようでロンドでない・・・?) ニ長調
ただし、各楽章の調性を見ると、なんの統一性もないというか、希薄というか、そのあたりがやはりマーラー的であることは確かです。
「第5番 嬰ハ短調」と書いてみても、決して「嬰ハ短調」というのが作品全体のトーンを決める調性でないことは明らかですから、このような伝統的な書き方にはあまり意味がないといえます。
それでも、前期の作品群と比べると、出来る限り強固な形式感を作品に与えることで、拡散するよりは凝縮的な表現を模索していることは事実です。
それから、どうでもいいことですが、この作品を仕上げる過程でアルマとの結婚を言う大きな出来事がありました。そして、新妻アルマはこの作品がお気に召さなかったというのは有名な話です。
彼女にとって、新進気鋭の作曲家であるマーラーにとって、この作品はあまりにも伝統的なものとうつったようです。
そんなエピソードからも、この作品の占めるポジションが透けて見えてくるようです。
また、マーラー作品の中で5番のアダージェットだけは有名でした。
ビスコンティの「ヴェニスで死す」で取り上げられたからです。
そんなわけで、マーラーの音楽など誰も聞いたことがないような時代でも、この第4楽章だけは有名でした。
ですから、SP盤の時代には、ワルターといえどもこういう形でしかレコーディングが出来なかったのです。こういう形でしか
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